見える人には見える

エドモンド・ハレー (1656 - 1742)
見える人には見える。

エドモンド・ハレー。かのハレー彗星が75.3年周期で太陽を回っていることを予言した人。ニュートンに「プリンキピア」の出版を勧めた大科学者。彼は、インド大陸に吹く「モンスーン」の仕組みも明らかにした。そういうことが「見える人には見える」のだ。

インドだけでなく赤道一帯に位置する国は、夏と冬に「モンスーン」と呼ばれる季節風が吹く。この風がいつどのように吹くかを予想するのは、インドを統治するイギリスにとっては重大事。貿易船はこのモンスーンに乗って、西へ東へ運航していた。また夏のモンスーンが吹かなければ、インド内陸部に飢饉が起きる。(☆1)

ハレーは、この「モンスーン」の原因を、太陽光がもたらす熱エネルギーがであることを明らかにした。インド大陸の陸地における温度上昇と、インド洋海面の温度上昇の差が、大気運動を作り出す要因であるという説をまとめた。(☆2)すごい人ですね。私のような凡人なら、天を見上げて「今年は雨が多いね〜」とか「蒸しますね〜」などと言うのだけのこと。

彼のような科学者は、なぜこうして「自然現象の裏側にある秘密」をさぐりあてるのだろうか。普通の人間にとっては、なんでもないことを「不思議だな」と感じたり「一体どうなってるんだろう」と、探り当てようとする好奇心旺盛な人なのでしょう。エドモンド・ハレーのような人には「見えないものが見える」ようになるのだ。

映画やテレビの脚本家というのも、そういうものかもしれない。TBSの「流星の絆」で、東野圭吾の原作を脚色した、宮藤官九郎さん。インタビューでこう言っていた。「うわべは、なんでもない表情を装っている人の内面にも嵐が吹き荒れていることもある。そういうことに気づかない人は、テレビのニュースに出てくる犯罪の被害者の心などについても想像することができない。しかし本当は、そこにものすごい大変な人生の物語が生まれているし、人々の壮絶な闘いがある」(☆3)

「見えない人には見えないもの」
それが「見える人には見える」

今年も秋のドラマシリーズが出そろった。いまのところ我が家では、遊川和彦脚本の「家政婦のミタ」と宮藤官九郎による「11人もいる!」が好調ということになっている。視聴率で見ても概ねそういう評価のようですね。どちらも、ストーリー展開が素晴らしい。「11人もいる!」では、末っ子の真田才差悟(加藤清史郎君です!)だけに、亡くなった前妻のお母さん(広末涼子)が見えるという設定なんですよ。

やはり宮藤官九郎さんのメッセージは「見える人には見える」ということなのかな。

ところで、冒頭でご紹介した、エドモンド・ハーレー。彼は、なんとイギリスの終身年金制度の設計のベースとなった、保険数理学の基礎も作ったりもしたんだって。人間の死亡統計を研究して、イギリスの年金制度の設計を可能にするなんて偉い。急激な少子高齢化によって崩壊寸前の日本の年金制度。この「見えない崩壊現象」の、どじょう総理には見えているのだろうか。

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☆1:最近では、これにはエルニーニョ現象が大きく関係している事が明らかとなりました。
☆2:田家康(たんげやすし)「世界史を変えた異常気象」pp.76-77
☆3:TBSエンタテインメント DVD 「流星の絆」

Photo : Klaus-Dieter Keller, Germany

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