嵐のシンポジウム

メディア学部主催のシンポジウムに参加しました。ソーシャルの時代到来を受けて、社会企業家による活動を考えるトークイベントでした。台風17号が猛スピードで北上中という悪条件にも関わらず、沢山の参加者で盛り上がりました。

キーノート・スピーカーは、デイビッド・グリーン氏。インドなどの貧困地域での医療活動にあたる。医療活動といっても、医師団を送り込むとか、地域医療の充実とかそういうことではない。いわゆる、市場破壊による医療イノベーションのことらしい。
白内障の手術や、補聴器の購買などは、アジアの貧困地域にとっては、あまりに高額医療である。貧困であるために、治療を受けられずに失明してしまうお年寄り、耳の聞こえない人々を救うプロジェクトだ。

理屈は簡単。医療機器や医療用材料の高騰を作り出して、高利潤をもくろむ大企業の向こうを張り、低価格の製品を生み出す仕組みを起業するのだ。低賃金の労働者を確保し、高水準の技術保有者を雇い、サプライチェーンを抑え、公的ファンドの支援を取り付ける。そして、大企業には逆立ちしても実現不可能なくらいの、低価格の医療サービスを実現するのだ。

まさに、現代の鼠小僧次郎吉。私腹を肥やす金持ちどもの鼻をあかし、貧困層へバラまく。義賊っていうやつ?いやいや、彼はもっとスマートな存在だ。弱者救済の理想に燃えた、市場の破壊者。今日のシンポジウムでは、とくに質問はなかったが、既存既得権勢力からの抵抗はどれだけのものだったか。ほんとにいろいろとご苦労があったと思います。偉い人だー。

台風17号の接近のため、プログラムが短縮された事もあり、グリーンさんと直接お話はできなかったけど、もし今度また、お会いで来る機会があったら、ぜひ聞いて見たいことがある。

グリーンさんは、日本の生んだ希代のアントレプレナー、松下幸之助さんをご存じですか? 日本人に、電灯という「光」を安価に提供した人。戦後の日本に高度成長という、サクセスストーリーの脚本を書いた人。聴覚障害を持つ方にも、口話教育システムを与えようと尽力された方。

グリーンさん、日本にもあなたのように理想に燃えた社会企業家がいらしたのですよ。松下幸之助さんというアントレプレナーが。いまのパナソニックに、その精神を引き継ぐ方々がどれだけいらっしゃるのかは、残念ながら、だんだんわからなくなっているのですが。

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