いつアートを発明したのか


ナショナルジオグラフィックの2015年1月号の特集は「人類はいつアートを発明したか?」である。驚くなかれ、その最古のものは10万年も前の洞窟にのこされた抽象表現ということだ。驚くなかれと言っておきながら無責任だが、僕自身はいったいどのように驚くべきかもわからないほど驚いている。なんじゃこれ?

僕たちがこのように、水彩画などを描いたりするのは、どちらかというと、中学や高校で習った美術や図工の時間の延長のようなもので、いわゆる一般市民の「趣味」という行為の中でやっているに過ぎないのかもしれない。僕自身、絵を描くのは好きなのだが「内側からこみ上げてくる創作意欲をおさえきれず...」というほどの欲求があるわけではない。

その点で、10万年もの前の洞窟で、土の壁にあるパターンを塗りあげた人や、数万年前に動物の骨からオブジェをつくりあげた人、土をこねあげて塑像を作った人たちは、どれだけのチャレンジ、どれだけの精神的飛躍をなしとげたことだろうか。

こうやって、画材屋さんで買い求めた水彩絵の具を、水道水で溶いて、純白の水彩用紙に塗る事ができる僕なんて、なんと恵まれた境遇にあることか。現代文明にお膳立てされている。その分だけ、描くという行為のポテンシャルは低いのかもしれない。あんまりやる気がないってこと?やっぱ、日常の「感動」ってやつを敏感にすくいあげるようにしなければいけませんな。

今日はおそろしいほど大きな満月がのぼるのを見た。こういう感動を洞窟の土壁に塗りたくる、そんな創作というものをしなければならないのだろうな、と、ぼんやり思う。いや、すべて僕たち現代人の生活というものは、原初的感動とは無縁の、文明の習慣によってつくられたパターンにしたがっているだけなのかもしれない。でも、まっいいか。楽しめてればね。


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